見た映画を順に載せる

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めぐりあう時間たち《監督・原作者コメンタリー編》
原題:The Hours
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚色:デイヴィッド・ヘア
出演:ニコール・キッドマン
   ジュリアン・ムーア
   メリル・ストリープ



   * * *

 この数日で3回見たことになります。
 それぞれ順に、通常字幕版、オーディオコメンタリー女優編、そして今回はオーディオコメンタリーの監督・原作者編。

 オーディオコメンタリーはやはり監督のエピソードが一番面白い。

 いろいろと映画の見方を教えてくれる。

 この映画はいろんな見方のできる映画だ。つくり込みについては、「凝りに凝った」という言葉通りにあらゆるシーンがよくできている。一見映像的に凝ったつくりはなさそうになさそうなのに、最近流行の池上彰風にいうと「そうだったのか!」の連続です。

 いきなりオープニングでの撮影裏話に驚く。
 ヴァージニア・ウルフが遺書を書き、入水自殺をするまでのシークエンスが描かれている。
 その遺書を書くシーンで、本来左利きのニコール・キッドマンが右手で書く練習をしていたこと。入水した川は監督のイメージとは異なった妥協の末に選ばれたものだったようだが、川を左から右へ流したかったために大型ファンを入れて川を逆流させたこと。川の撮影以外に肺に水が入ってゆく様子を撮りたかったために大型水槽での撮影も行ったが、ほとんどカットしてしまったこと。タイトルの "The Hours" が出る直前に水中のヴァージニア・ウルフの靴が脱げるシーンがあるが、ワイヤーで引っ張ったこと。
 オープニングのごく短いシーンにこれだけのエピソードが含まれている。
 それが2時間になると一体どうなるのか、と思うと、やはり凄かったのです。

 普通に見ればわかる共通のモチーフは多い。ここで「共通」というのは三つの物語で同じモチーフが共通に用いられていることを指す。
 オープニングのシークエンスで、1923年、1951年、2001年の三人の女性を結びつけるために巧みな編集で強く結びつけている。
 ベッドの左側で寝ている。左向きで目覚める。起きて髪を結う。鏡を見る。そういう細かい動作がまるで一人の人間を撮っているかのように繋ぎ合わされている。
 もちろんそういう直接的なシークエンスだけではない。
 たとえば、食材あるいは食品の扱い方はいずれもグロテスクに撮られ、ゴミ箱に捨てられるシーンがある。卵を割るシーン。花を花瓶に入れるシーン。物語として、早すぎる来客、あるいは不意の来客。

 他にも挙げればきりがないのだが、ひとつとっておきの仕掛けを明かしておきたい。
 物語の終盤までローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)の息子が後のリチャード(エド・ハリス)であることを明かさないが、実はそれまでに重大なヒントが隠されていたのだ。
 エド・ハリスが纏っているブルーのガウンは1951年のシーンでは子供のベッドカバーとして登場しているのだ。これにはさすがに驚いた。

 最後に、この映画の物語としての核となる「自殺」について少し触れてみたい。
 以前の記事(2010.10.06)でオープニングのヴァージニア・ウルフと詩人リチャードが自殺すると述べたが、それだけではない。リチャードの母である1951年のローラ・ブラウンがその日ホテルの一室で自殺し損ねたというのを忘れてはならない。ここでは映画全編で唯一のイメージ映像が流れる。それ以外は徹底して映画的に「起こったこと」しか画面に現れないのに、ローラがホテルの一室で薬を飲んで自殺を決意したシーンにのみホテルの部屋に水が満ちてゆく空想のシーンが流れる。しかしながら死ぬことができなかった彼女は、ホテルの部屋を出て、息子を預けたベビーシッターの家に引き取りに寄り、帰宅して夫を待つ。
 言い換えるならば、もうチェックアウトするはずのないホテルをチェックアウトする。
 もう運転するはずのない車を運転する。
 もう会うはずのない息子を引き取りに行く。
 もう帰るはずのないバースデーケーキがテーブルの上に置かれている家に戻る。
 その動作ひとつひとつに彼女の誰にも言うことのできない「生」に対する苦悩と哀しみが突きつけられるのだ。そして、その自殺を強く感じ取った幼いリチャードが、その思いを引継ぎ窓から身を投げるシーンに引継がれる。
 はじめに「少し」だけ触れると書いてしまったので、ここまでとしておこう。

 最後にもう一度、以前書いたヴァージニア・ウルフの台詞を今度は英語で書き留めておきたい。


The meanest patient, yeas, even the very lowest is allowed some day... in the matter of her own prescription.
Thereby she defines her humanity.
I wish, for your sake, Leonard, I could be happy in this quietness. But if it is a choice between Richmond and death, I choose death.

You cannot find peace by avoiding life, Leonard.




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2010.10.06 >> m-moviediary.jugem.jp/?eid=36#sequel
2010.11.05 >> m-moviediary.jugem.jp/?eid=42

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DVDで2回連続見た。1回目は普通に。2回目は女優三人によるオーディオコメンタリーで。
めぐりあう時間たち《2連続》 | 映画日記 | 2010/11/23 16:04